「勉強しなさい」と言わなくても勉強するようになる 10のコーチングテクニックと実践

子供が自ら勉強するようになる、コーチングの極意。学習塾の経営コンサルタントが教えます。

9.ルーティンの力、場の力、礼の力

こんなアイディアがあります。子供の部屋のドア(外側)に小さなホワイトボードをぶら下げておく。そのホワイトボードに「今日は数学のテキスト10ページから13ページまでやる!」と書いてからその子は部屋に入ります。

そうしたらその子は部屋に入ってまず何をするでしょうか。それで漫画を読み始めたらなかなかつわものです。確実に勉強にとりかかることでしょう。そして、勉強が終わって、部屋から出るときにホワイトボードを消そうと思ってみると、お母さんの字で「がんばれ!!」とか書いてあったりしたら、それだけでその子の努力に対しての承認となります。

よくスポーツ選手がやる、決まった動き、ルーティンのことを考えてみましょう。野球のピッチャーが投げる前に行う、腕をぐるぐる回す動き、バッターがバッターボックスでピッチャーの方にバットを向ける動き、サッカー選手がピッチに入るときにラインを右足で飛び越える、試合前に音楽を聴く、など何かは聞いたことがあると思います。似たようなことをやっているかもしれません。緊張する場で手に人と書いて飲み込むとか靴下は右足からはくとか。一昔前はジンクスと呼んでいたことと似たようなことです。集中するために毎回行う決まった行動のことです。

勉強でもこれを利用することはできないかと考えたわけです。子供が自分でこのルーティンを自力で理解して、勉強に使ってくれるとうれしいですが、別に集中したくもない時にわざわざ自らルーティンを作るでしょうか。小学生だったらできるでしょうか。であれば、そのルーティンを作ってあげるのです。上記のホワイトボードの例はルーティンを作ってあげる一つの例です。

子供たちは、学校では挨拶をして授業を始めるというルーティンをやっています。しかし、これはルーティンとしての役割を半分しか担ってくれません。なぜなら、これは自ら進んでやっているものではないからです。そこに、ルーティンとしての役割を100%つけるためには、自らやるという行動が伴わないとなりません。

しかし、半分の役割とは言え、授業の挨拶をすると教室は静かになり、生徒は先生の話を聞くようになります。これは日本人の心ですね。「礼の力」です。いい加減ではない、しっかりとした礼をすると、日本人の集中力は一気に高まります。家庭で実践するのは難しいことですが、他で子供が礼をしたときに、集中力を高められるよう、礼の大切さは伝えておかなければなりません。

そして、「場の力」です。よく、うちの子は勉強をリビングでやります、リビングは家族でテレビをつけているので、ながら勉強になっていないか心配です、というお話を聞きます。確実にながら勉強になっていることでしょう。子供にとってリビングが落ち着く場なのは当然です。みんないるし、家族の会話も聞けるし。でも、あなたも経験がありませんか?お寺に行ったら急に厳かな気持ちになる、試合会場に入ったら急にやる気になる、畳の部屋に入ると急に落ち着く、病院に行くと病気になった気がする、トイレに入るととても落ち着く、なんて経験がありませんか?

これは場の力なのです。それを勉強でも利用するとしたら、勉強に適した場を提供してあげることが必要なのです。この部屋に入ったら、よし勉強するぞ、と思える場です。家庭で、勉強のためだけの部屋を作ることは難しいです。であれば、どうすればいいのか。その場、というか、状況を作ってあげるのです。それが、学校の教室内で行われる挨拶だったりするのです。休み時間を過ごしていた生徒たちも、挨拶をすると、同じ教室という場であっても、勉強する場として認識するから授業に集中するのです。(最初は)

だから、自分の部屋も、くつろぐ場という状況と勉強する場という状況を作ればいいのです。そのメリハリがない状態で勉強にするっと入ってしまうから、リビングでの勉強はよくないのです。自分の部屋の敷居をまたぐ瞬間に、これをまたいだら勉強するぞ、という意識を作ることが重要です。でもそれを自らやりなさいと言ってもなかなかやれる子供はいないですね。

そこで、最初のホワイトボードの例なのです。ドアの外側にぶら下がっているのが重要です。部屋に入る前に、目標を書くから、ドアを開けて敷居をまたぐのに心の準備ができます。ここをまたげば勉強するぞ、という気持ちを自ら自然と作ることができるのです。

 

一つのホワイトボードという例ですが、他にも考えればいくらでも考えられることだと思います。一つひとつのことに、意味を持たせられるようにしましょう。