8.目標設定の力
ケーススタディをたくさん見ていきたいと思っていますが、もう少し基礎知識を持っておきましょう。今回は目標設定の力についてです。
何事にも目標があります。社会人である私たちも仕事の目標があります。小学生にだって、将来ピアニストになるという目標を持つ子はたくさんいるでしょう。ただ、目標を捉える前に、目標と目的の違いをはっきりとさせておきましょう。
目的:何のために勉強するのか
目標:テストで満点をとる
目的の方が大きくて一つのイメージです。目標は一つではなく具体的なものです。
さて、子供に勉強をするというモチベーションを与えるためにはどちらが大事なのか。答えはどちらも大事ですが、子供の視野では目的を捉えるのはなかなか難しいです。だから、力を発揮するのは目標の方でしょう。
ここでもう一つ知っておいてほしいことは、
目標と承認はセット
ということです。「承認」という言葉の捉え方は難しいです。心理学的に認めることのような大きな話ではなく、「目標達成できたね。」と褒めることも承認に入りますし、何かごほうびがあることも承認と捉えてください。
目標を設定するだけでは足りないし意味がありません。承認がないと目標は立てる意味さえないと言っても過言ではありません。
目標が大事だという言いましたが、目標の話をする前に「目的」の話が必要です。
「何のために勉強するのか」
誰もが子供のころに持った疑問です。親として答えられますか?
学校の先生でも塾の先生でも明確な答えを持っている人はいません。明確にならないほどいろいろな答えがあるし、人によって考え方は違います。
「将来の夢をかなえるため」
「将来苦労しないため」
「お金持ちになるため」
「親の後を継ぐため」
「生きる力をつけるため」
「将来食べていくため」
「みんながんばっているから」
「受験のため」
どれも正しいのです。具体的ではないし、きれいごとのようなものもあります。こんな抽象的な概念的なものが子供の口から出てきたら逆に怖いぐらいです。でも、子供たちは何のために勉強しなければならないのかわからないのです。多くの子供たちがわかっていない、というか誰からも教わってないから、手探り状態で小さな目標ばかり与えられて、時には怒られ、強制的にやらされているのです。
よく考えてみるとおかしなことです。自分の行動原理がわからずに勉強しているようなものです。意味もなくジョギングはしないですよね?ダイエットするから走るのですよね?
勉強の目的を子供に伝えていないのが悪いのです。それは学校の先生がやってくれる?塾の先生がやってくれる?
よく聞きませんか?親は学校の先生なのに子供はあんなにぐれちゃってって。学校の先生だって人間です。部活の顧問をやっていたら、忙しい営業マン以上に忙しい人たちです。塾の先生が勉強の目的を教えてくれる?塾の先生の中にはずぶの素人だっていますよ。教員免許を持ってない人だってたくさんいますよ。まぁ教員免許なんて形だけのようなものですが…。
勉強の目的は、親が教えないと誰も教えてなんてくれません。しかも、その年齢に合った、その年齢でも理解できる言葉で教えてあげなければなりません。勉強ができるかできないかは、本人のせいでも、学校のせいでも、塾のせいでもありません。親の責任なのです。だけど、目的は抽象的なもの。子供に語りかけるだけのものになります。だから一貫してなくてもいいのです。変わっていってもいいのです。目的がありさえすればそれでいいのです。
さて、目標の話でした。目標設定がモチベーションになることは大丈夫ですね。であれば、目標設定を適切に行うことが重要です。
●目標設定のポイント
・期限があること
・具体的な数字であること
行動目標も大事ですが、期限と数字は重要です。なぜなら、コーチングの場合はその場で行動に起こせることが重要だからです。今何をすべきかを本人に決めさせるためにはきわめて具体的でなければなりません。
●期限設定のポイント
・3ステップの法則
目標はステップがあった方がいいと思います。目標が大きすぎても、期限が先過ぎても厳しいです。ただ大きな目標は大きなモチベーションになります。でも、大きな目標は具体的な行動には結び付きづらいという側面もあります。
たとえば、子供が40歳までに一戸建てを買うなんて目標を立てるのは現実的ではないですよね。でも、その子は一戸建てはがんばらないと買えないんだと理解しています。だから将来お金を稼げるようになろうとがんばれるのです。
モチベーション効果の大きな大目標と具体的行動のおこしやすい小目標を持たせたいですね。
そこで、目標3ステップの法則の提案です。大・中・小の目標を立てるのです。まずは大から。期限は遠いですが、モチベーションになるようなワクワクするような目標です。それに対して、途中経過のような中目標です。これはワクワクを出しづらいので、目標達成時にごほうびがあるようなものにすると中だるみしません。そして、今すぐ行動に起こせる小目標です。
具体的に例を出してみましょう。期限と具体的数字が必要でした。目標を立てるときはもちろん大目標からです。ワクワクした方がいいからです。
大目標:2020年3月に○○高校に1位で合格
中目標:2019年3月に○○県模試で100番以内に入る。達成時に新しいゲームを買う
小目標:明日までに数学のテキストの10ページから20ページを終わらせる
こんな感じです。こうすると、小目標は毎日変えていかなければなりません。だったら毎日変えていきましょう。昔からよくある手法をとればいいのです。大目標、中目標を紙に大きく書いて壁に張ったりするアレです。小目標は、100均で小さなホワイトボードを買ってくるといいです。部屋のドアとかにぶら下げておくのです。本人は、毎日そのホワイトボードに今日の目標を書いてから部屋に入るのです。
次回は、そんな場の力について書きたいと思います。